【マグロの選び方】料理人が教える5つのポイント|食材選び

tuna-block 魚 刺身

マグロの選び方は普通の魚と少し違います。
魚体が比べものにならないほど、大きいからです。

細かくサク取りするため、タイやブリのように血合いの色や皮目の模様が確認できません。
マグロの選び方は他の魚と違い、筋の向きや間隔などを重視します。

私は料理人として16年間マグロを見てきました。
ブロックで仕入れ、店舗でサク取りをしていた時代もあります。

この記事では「マグロの選び方」を15年の知識と経験から、わかりやすく解説します。
最後まで読めば、今までよりも美味しいマグロのお刺身が食べられます。

マグロの選び方で見るべきポイントは5つです。

  • ドリップが出ていない
  • 赤い点やシミがない
  • 色が鮮やかで濃い
  • 筋の間隔が広い
  • サクが三角形

色・筋の間隔・サクの形は、部位によって選び方の基準が若干異なります。

マグロ以外の刺身の選び方を知りたい方はコチラ。
魚以外の選び方を知りたい方はイカの選び方カニの選び方をどうぞ。

目次からお好きな見出しへ移動できます。気になる所からお読みください。

マグロの選び方の基本【真っ先に見るべき2つのポイント】

マグロは通常、サクと呼ばれる長方形の切り身で売られています。
パック詰めにされているため、見た目だけで判断するしかありません。

マグロの選び方で、真っ先に見るべきポイントは2つです。

  • ドリップが出ていない
  • 血栓(赤い点々)がない

ドリップが出ているマグロは、時間がたって劣化している証拠です。
市販のマグロは冷凍品を解凍して売ることが多いため、ドリップが出やすくなっています。

赤いシミや赤い線が入っているマグロは、血抜きが不十分なため血生臭いです。
雑に扱われ身が傷んだ証拠で、輸入物のメバチマグロによく見受けられます。

ドリップや血栓の確認は、マグロ選びの基本です。

マグロの部位ごとの選び方【料理人が見ている3つのポイント】

マグロの部位はおもに「赤身・中トロ・大トロ」にわけられます。

大トロや中トロなどの脂が多い部位は、大型のマグロにしか存在しません。
マグロの種類については、下記で解説しています。

赤身の選び方

  • 色‥赤色が濃いほどいい
  • 筋‥真横に近いほどいい
  • 形‥横から見て三角形に近い

選びたいのは背骨付近の身で、やわらかくて旨みが濃い部分です。
マグロのブロックで見ると、三角形(△)の頂上が背骨付近(中心部分)。

赤身の色と筋には、次のような特徴があります。

  • 中心(背骨)に近いほど赤色が濃く筋が弱い
  • 外側へいくほどピンク色になり筋が強くなる

美味しい赤身の選び方は、「赤色が濃くて三角形に近いサクを選ぶ」ことです。

赤身の希少部位・天身(てんみ)の選び方

天身は赤身の最高級品で、もっともやわらかく筋っぽさがまったくない部位です。

  • 色が濃すぎて赤黒く見える
  • 筋が放射線状に入っている
  • 横から見て三角形

△の頂上が天身で最初にサク取りするため、必ず三角形になります。
味は抜群でも色や形がよくないため、売れ残っている可能性が高いです。

中トロの選び方

  • 色‥鮮やかでツヤがある
  • 筋‥筋の間隔が広いもの
  • 形‥横から見て三角形に近い

選びたいのは「頭・真ん中・尻尾」にわかれた内の真ん中部分。
中トロの中でも、とくに脂が多く筋が弱いからです。

筋の本数はどの魚も同じで、体の幅によって密度が変わります。
マグロは真ん中へいくほど体が膨むため、必然的に筋の間隔が広がり弱くなるのです。

赤とピンクの割合で、赤身と脂のバランスがわかります。

  • 脂の乗りで選ぶならピンク色が多め
  • 赤身メインで選ぶなら赤色が多め

コツはサクの横から見ること。赤身と脂身の厚みを確認できます。

中トロの希少部位・血合いぎし(血合い下)の選び方

赤身も脂身も旨みが強い部位で、きめ細かいので身がとろけます。

  • 色がはっきりしていてツヤがある
  • 横から見て三角形になっている
  • 脂のサシがきめ細かい

通常は長方形のサクが、隣接する血合いを削り取るため三角形になります。
天身と同じで見た目がよくないため、売れ残っている可能性は高いです。

大トロの選び方

  • 色‥ピンクと白色の境目がぼやけている
  • 筋‥筋が太くて脂のサシが細かい
  • 形‥厚みがある(正方形に近い)

ピンクから白へとグラデーションになっているほど、脂が全体に回った美味しい大トロです。

ヒレに近い部分は筋が太くなりますが、脂をたっぷり含んでいるため口の中でとろけます。
正方形や丸みを帯びたサクは、お腹の先端(ヒレ付近)で一番脂が多い部分です。

サクが分厚いほど大トロに近く、薄いほど中トロに近くなります。

大トロの希少部位・カマ下の選び方

大トロの中心部分で、大型のマグロ1本から少量しか取れません。
筋をまったく感じないのが特徴で、濃厚な脂の香りと甘みが舌に残ります。
大理石のように入った脂のサシは、まるで霜降り肉です。

  • 薄いピンクか白色
  • 筋が薄くて目立たない
  • 脂のサシが散りばめられている

小売店でお目にかかることは滅多になく、通販サイトでまれに売られています。

代表的なマグロ5種類の味と特徴【それぞれの選び方とおすすめの食べ方】

ひと口にマグロといっても種類があり、味や身質が別物です。
それぞれの特徴を知っておけば「いつものマグロと味が違う」という事態を回避できます。

一般に流通しているマグロは、下記の5種類です。

クロマグロとミナミマグロは養殖も盛んで、人工ふ化に成功した近畿大学の完全養殖クロマグロは有名です。
残りの3種類は採算面で養殖が難しく、現状はすべて天然物が流通しています。

クロマグロ(本マグロ)

  • 身色‥深い赤色・濃い赤色
  • 味‥マグロ特有の酸味がある・脂の乗りがよい
  • 選び方‥茶色や黒に変色していないものを選ぶ

色がキレイで鮮やかなほど、鮮度と味がよい状態です。

大トロと中トロが取れます。
やわらかい身はマグロの味が濃く、酸味や鉄分をしっかり感じます。
濃厚さが血生臭いと感じる人もいますが、通に好まれる味です。

北半球を回遊しているため、獲れる海域によって旬の時期が異なります。
日本近海では冬が旬で、青森県大間で獲れるクロマグロ(本マグロ)は最高級ブランドです。
スーパーに並ぶ本マグロは、ほとんどが養殖(蓄養)です。

養殖と蓄養の違いについては、下記で解説しています。

おすすめの食べ方

  • 生食‥刺身・ヅケ・炙り
  • 焼物‥塩焼き・漬け焼き・ソテー
  • 煮物‥煮付け・角煮
  • 揚げ物‥竜田揚げ・南蛮漬け

刺身系が一番おすすめですが、いろいろな調理法ができます。
「脂が多い部分は塩焼きや煮付けに・赤身部分は醤油漬けにして焼き物や揚げ物に」

ヅケマグロを作るときは、表面が白くなる程度に下茹でしてから漬け込むのがコツです。
臭みが抜けて食べやすくなり、醤油の漬かりすぎも防げます。
まとめて売っている血合い部分は、ニンニクを効かせた竜田揚げがおすすめ。

ミナミマグロ(インドマグロ)

  • 身色‥明るい赤色・ルビー色
  • 味‥もっとも甘みが強い
  • 選び方‥凹んだり黒ずんだりしていない・筋が少ない

運搬に時間がかかるため、身に傷やへこみがあるとすぐに変色します。

大トロと中トロが取れます。
脂に甘みがあり、ねっとり濃厚なトロの部分がとくに人気です。
身が締まっているため解凍すると端っこが反り返りますが、「ちぢみ」という現象で新鮮な証拠です。

天然物の旬は春から夏で、養殖物は通年出まわります。

色が濃いぶん黒く変色しやすいため、一般の小売店では滅多に見かけません。
流通するほとんどが冷凍品で、生のミナミマグロは希少です。

おすすめの食べ方

  • 生食‥刺身・ヅケ・カルパッチョ
  • 焼物‥塩焼き
  • 煮物‥煮付け・潮汁・味噌汁
  • 揚げ物‥レアカツ・塩から揚げ

色変わりが早いので、黒ずんでしまったときなどにお試しください。

クロマグロよりもクセがないので、シンプルな調理法がおすすめ。
塩味ベースの味付けで、脂の甘味がより強く感じられます。
身が締まっているので、加熱しても身崩れしません。

メバチマグロ

  • 身色‥鮮やかな赤色
  • 味‥程よい脂と少しの酸味がある
  • 選び方‥キレイな赤色・脂のサシが見える・筋が少ない

筋が細くて間隔が広いものを選びましょう。
白い膜状になっているマグロは、筋が噛み切れず口に残ります。

大トロはなく40㎏を超える大物から、中トロに近い部位が取れます。
あっさりした身の中に、マグロ特有の酸味をわずかに感じます。
おもに関東で流通し、選び方によって当り外れが激しいのが特徴です。

赤道付近を中心に世界中の海で獲れるため、旬は海域によって異なります。
関東のスーパーや飲食店で見かけるマグロは、ほぼメバチマグロです。

流通するすべてが天然物で、ほぼ冷凍品です。
秋から冬にかけて獲れる、日本近海の生メバチマグロは高値が付きます。

変色しにくいですが、正しい解凍方法が必須です(下記で詳しく解説)。

おすすめの食べ方

  • 生食‥刺身・ヅケ・ユッケ
  • 焼物‥漬け焼き
  • 煮物‥煮付け・味噌煮
  • 揚げ物‥竜田揚げ・南蛮漬け

あっさりしたマグロなので、濃いめの味付けがよく合います。

タレやオイルで、旨みとコクを足す調理法がおすすめ。
とくに筋が多い部位は、加熱することでやわらかく食べられます。

ヒレの近くに「ハラモ」という大トロに相当する部位があります。
かなり筋が多いため、炙ったり茹でたりして食べるのが一般的です。

キハダマグロ

  • 身色‥薄い赤色・赤とピンクの中間色
  • 味‥あっさりしていてクセがない
  • 選び方‥赤色の中にサシが見える

色や筋には個体差があまりないので、少しでも脂が多いものを選びましょう。

全体的に脂が少なく、トロと呼べる部位はありません。
頭近くの腹側の身に、わずかに脂が乗った部分があります。
あっさりとした身は臭みがなく、筋が弱いので口に残りません。

メバチマグロとよく比較されますが、よりクセがなく値段も安めです。
変色しにくいぶん、マグロの旨みをあまり感じない人もいます。

冷凍品は通年出まわりますが、春先に獲れる近海の生キハダマグロは一級品です。
関西を中心に流通し、ツナ缶の原料にも使われます。

おすすめの食べ方

  • 生食‥刺身・炙り・山かけ・カルパッチョ・なめろう
  • 焼物‥漬け焼き・ソテー・ムニエル
  • 煮物‥味噌汁・すき焼き風煮付け
  • 揚げ物‥から揚げ・フライ(タルタルソース付き)

脂が少ないので、バターや油を使った調理法がおすすめ。
しっかり味付けしたほうが、満足感のある料理ができます。
身が丈夫で崩れにくいため、残った刺身で調理することも可能です。

ビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)

  • 身色‥薄いピンクと白の中間色
  • 味‥脂が少なくて淡泊
  • 選び方‥分厚くて白っぽいもの

サクが分厚いということは、魚体が大きいということ。
大きいマグロのほうが、脂が乗っています。

トロは存在せず、マグロ類の中でもっとも安価です。
回転寿司で人気の「ビントロ」とは、脂が乗る時期に漁獲されたビンナガマグロの呼び名です。
かなりあっさりしているぶん、マグロ好きは物足りなさを感じます。

春から夏にかけて水揚げ量が多くなり、4~8月頃にピークを迎えます。
とくに6~8月頃に「東沖」で獲れる一本釣りのビンナガマグロは、脂の乗りが抜群です。

おすすめの食べ方

  • 生食‥刺身・炙り・ヅケ・カルパッチョ・マリネ
  • 煮物‥潮汁・味噌汁・佃煮
  • 揚げ物‥から揚げ・フライ・天ぷら

加熱すると硬く締まるので、焼き物には向きません。
パサつきを防ぐため、調味料やオイルで油分を加えるのがおすすめ。
加熱しすぎないよう、注意しましょう。

天然と養殖・生と冷凍の違い【冷凍マグロの解凍方法】

育ち方や輸送方法によって、同じ種類のマグロでも味が大きく変わります。
身質や脂の乗り具合に差が出るからです。

とくに生のマグロは旬の時期限定のため、希少価値が高くなります。

天然マグロ

  • 特徴‥赤色が濃く変色しやすい
  • 味‥マグロの味が濃い

天然のマグロは小魚・イカ・甲殻類など、いろいろな餌を食べる雑食性です。
豊富な餌をバランスよく食べて育つので、濃厚な旨みと上質な脂を兼ね備えています。
広い海を止まることなく回遊しているため、身が引き締まっているのが特徴です。

世界中の海で漁獲され、獲れた海域ごとに特色があります。
色落ちが早く、養殖と比べて日持ちしません。

下記のマグロは、流通するすべてが天然物です。

  • メバチマグロ
  • キハダマグロ
  • ビンナガマグロ

天然のクロマグロは、スーパーなどの小売店ではあまり見かけません。
ミナミマグロは高級店や専門店で、おもに取り扱われています。

養殖マグロ

養殖マグロは「養殖」と、表示する決まりになっています。

  • 特徴‥色が薄く変色しにくい
  • 味‥全体的に脂が多い

餌はサバやイワシなどの生餌や、魚粉や魚油などを合わせた配合飼料です。
生け簀の中で栄養満点の餌を食べて育つため、脂を多く含んでいます。

赤身にも脂がまわっているので、トロが好きな人にはおすすめです。
品質が安定していて、天然マグロより日持ちします。

流通している養殖マグロは2種類です。

  • クロマグロ
  • ミナミマグロ

スーパーで「本マグロ」として売られているものは、ほとんどが養殖(蓄養)です。

養殖と蓄養(ちくよう)の違い

養殖は卵や数㎝の稚魚の状態から、餌を与えて育てること。
近畿大学水産研究所が成功した完全養殖とは、養殖で育ったマグロを指します。

蓄養はもともと海にいる若いマグロを捕獲し、数ヶ月間で太らせ出荷させること。
海の資源を利用しているので、絶滅危惧の根本的な解決にはなっていません。

生と冷凍の違い

生マグロは香りや旨味が強く、口どけがなめらかです。
解凍する必要がないので、ドリップが少なく身割れしにくいのが特徴です。
味はいいですが、生のため日持ちしません。
一般に流通しているマグロはどの種類も冷凍品が多く、旬の時期に生のマグロが出まわります。

冷凍マグロは「解凍」と表示する決まりです。
遠方から運ばれるため、漁獲されてから時間がたっています。
身割れしやすく、解凍のやり方しだいでは水っぽくなるのが特徴です。
味は落ちやすいですが、長期保存できます。

近年は冷凍技術の発展により、以前と比べて格段に品質がよくなっています。
正しく解凍すれば、冷凍マグロも美味しく食べられる時代になりました。

失敗しないマグロの解凍方法【切り方のコツも伝授】

市販のマグロはほぼ冷凍品のため、正しい解凍方法が必須です。

いろいろなやり方の中でも、オーソドックスな解凍方法を紹介します。
現役の料理人が実践しているやり方です。

冷凍マグロの解凍方法

40℃の「温塩水」で解凍する方法です。

  1. 約40℃のお湯に3%の塩を入れよく混ぜる。(海水と同じ濃度でしょっぱい)
  2. マグロ表面の粉くずを水道水でサッと洗う。(洗いすぎない)
  3. 温塩水に冷凍マグロのサクを4~5分ほど浸ける。(マグロを沈ませる)
  4. マグロを取り出し、水道水で塩気を軽く洗い流す。(洗いすぎない)
  5. キッチンペーパーで水気をよく拭き取る。(押さえ付けるように優しく)
  6. 厚手のキッチンペーパーで包み、冷蔵庫で1時間ほど置く。(ラップはしない)

マグロが水っぽくなるので、真水に触れる時間は最小限にしてください。
身が縮むことがありますが、速やかに冷凍されたためで新鮮な証拠です。

時間に余裕がある場合は浸し時間を1~2分にして、冷蔵庫で12~24時間おきます。
寝かせることで余分な水分が抜け、旨みが凝縮するからです。
マグロが乾かないように、キッチンペーパーの上からラップをしてください。

マグロを上手に切るコツ

筋が傾いている(倒れかかっている)方向に切るのがコツ。
筋肉の繊維に沿って包丁が動くので、刺身が崩れません。

マグロを横から見ると、筋がどちらかに傾いています。
傾いているほうを手前にして置くと、筋に沿って切れます。

筋が傾いている方向へ包丁を動かすと、身がダメージを受けません。

横から見て筋が左側へ(\)傾いている場合は、左から右(←)の方向へ包丁を引きます。
筋が倒れかかっている方向に、包丁を動かすイメージです。
逆方向(→)へ切ろうとすると筋を起こすように包丁が動くため、反動が大きくなり身が崩れます。

マグロを切るときは、必ず横から見て「筋が傾いている方向」をチェックしましょう。

マグロの選び方【まとめ】

マグロの選び方で見るべきポイントは5つです。

  • ドリップが出ていない
  • 赤い斑点やシミがない
  • 色がキレイで濃い
  • 筋の間隔が広い
  • サクが三角形

色・筋・形は部位によって、選び方の基準が異なります。

マグロに限らず鮮魚は温まると、ドリップが出て旨みが抜けます。
低温をキープするために、氷で冷やして持ち帰りましょう。

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