魚の選び方はひとつではありません。
何を重視して選ぶかによって、チェックポイントが変わるからです。
この記事では「魚の選び方」を料理人歴16年の視点から解説します。
一尾か切り身か、鮮度か脂の乗り具合か、目的ごとのチェックポイントがわかります。
ほとんどの魚に共通する選び方なので、魚選びに不慣れな人にもおすすめです。
最後まで読むと、魚の選び方で失敗しません。
魚の美味しさを決める要素は「鮮度・脂・旨み」の3つです。
- 鮮度…新鮮なほど臭みがなく、歯ごたえを楽しめる。
- 脂の乗り…魚の味と香りを決める要素で、個体差がある。
- うま味成分(イノシン酸)…魚が持つ旨みそのもので、多いほど美味しく感じる。
鮮度は臭いや食感に影響し、脂とイノシン酸の量は味と香りに直結します。
生臭さや食感を気にするなら鮮度重視の選び方、味や香りを重視するなら脂の乗り具合で選びましょう。
理想は新鮮で脂が乗った魚を選ぶことです。
この記事は、魚丸ごと一尾と切り身の選び方がメインです。
刺身の選び方を知りたい方はコチラ。
イカの選び方を知りたい方はコチラ。
カニの選び方を知りたい方はコチラ。
目次からお好きな見出しへ移動できます。気になる所からお読みください。
【新鮮な一尾の魚の選び方】鮮度がわかる6つのポイント
一尾の魚は見た目で鮮度を判別できるため、そこまで難しくありません。
発泡スチロールに氷漬けにされている場合は、触った感触や臭いでも鮮度をチェックできます。
新鮮で脂が乗った一尾の魚の選び方は、下記の6つ。
1~3は見た目、4~6は直接魚に触ってチェックする選び方です。
パック詰めされていない場合は、臭いもチェックしましょう。
新鮮な魚は臭みがなく、鮮度が落ちるほど血や脂が劣化して生臭くなります。
魚に触れる場合は、お店に迷惑がかからないように気を付けましょう。
できれば、店員さんに許可をもらったほうが無難です。
売り物であることを、忘れてはいけません。
目が透き通っている
一尾の魚の選び方で、目をチェックするのは基本です。
鮮度の違いが出やすく、見た目で判断しやすいからです。
新鮮な魚は眼球が透明で、黒目がはっきりしています。
時間がたつと、透明部分が白く濁り黒目がぼやけてきます。
ただし、新鮮な魚でも氷に触れていると、冷えすぎて目が白くなります(氷焼け)。
氷漬けの魚は、目の透明な部分の張り具合をチェックしましょう。
新鮮な魚の目は、丸みを帯びたレンズ型になっています。
鮮度が落ちてくると、眼球自体が沈んで顔全体に血がにじみます。
ウロコがはがれていない
ウロコがキレイに並んでいる魚は、新鮮なだけでなく丁寧に扱われている証拠です。
魚の身はもろいので、乱暴に扱うとボロボロになってしまいます。
身割れや身崩れのデメリットは、下記のとおりです。
- 調理がしづらい
- 見栄えが悪くなる
- 歯ごたえが損なわれる
ウロコがはがれていたり傷が付いていたりする魚は、身が傷んでいる恐れがあります。
ついでに魚体の色つやもチェックするのが、確実な選び方です。
全体的に光沢があり、模様が鮮やかに出ている魚を選びましょう。
鮮度が落ちた魚は、体を覆っている粘液が白く濁ってくるため、色がくすんで見えます。
尾びれがピンと張っている
魚の尾びれとは尻尾のことで、鮮度が落ちるとダラっと下がってきます。
死後硬直が解け、身に弾力がなくなるからです。
ひれの先端が乾いている場合は、売り場に並んでから時間がたっています。
また、尾びれの形状で天然か養殖かをチェックできます。
真鯛によく使われる選び方です。
- 天然魚の尾びれ…大きくて尖っている
- 養殖魚の尾びれ…小さくて丸い
天然魚は広い海を泳ぎ回っているため、尾びれが大きく発達し鋭く尖っています。
一方で養殖魚は狭い生けすで育つため、尾びれが発達せず小さいままです。
網や他の魚との接触も多く、尾びれが擦れて丸く変形しています。
次は直接魚に触って鮮度をチェックする選び方です。
くれぐれも丁寧に扱いましょう。
絶対に魚を折り曲げてはいけません。
身割れや身崩れの原因になるからです。
身に弾力がある
皮と身の張り具合を触って確かめます。
皮がたるんでいる、指で押して弾力がない、手に持ったときに頭と尻尾が下がる魚は、鮮度が落ち始めています。
魚は死後硬直が解けて柔らかくなってから、鮮度が落ち始めます。
弾力があるうちは、死後硬直から間もない新鮮な段階です。
お腹に張りがある
一尾の魚の選び方では、お腹の張り具合も外せないポイント。
内臓は腐りやすい部分のため、鮮度の違いが出やすいのです。
新鮮な魚はお腹に張りがあります。
鮮度が落ちるとお腹に張りがなくなり、内蔵が溶け出してきます。
お腹がやわらかい魚や肛門から濁った水が出ている魚は、時間がたっている証拠です。
内臓が溶けてブヨブヨになり、流れ出るほど鮮度が落ちています。
エラがキレイな赤色
頭の後ろ(胸びれの前)にあるエラ蓋を持ち上げて、エラの色を見ます。
エラ蓋は鋭利なので、指を切らないよう気を付けてください。
キレイな赤色で、鮮やかであるほど新鮮な魚です。
鮮度が落ちると、エラが黒ずんできます。
エラの色は、魚を見慣れていない人にもおすすめの選び方です。
鮮度の違いが出やすいからです。
魚は血液が腐ると色が悪くなり、生臭くなります。
エラは血管が集中しているため腐りやすく、すぐに変色し血生臭くなるのです。
【新鮮な一尾の魚の選び方~おさらい~】
魚の臭いが苦手な人や歯ごたえを重視するなら、獲れたてが一番です。
新鮮な魚は色つやがよく、張り(弾力)があります。
パック詰めされていない場合は、臭いもチェックしましょう。
【脂が乗った一尾の魚の選び方】鮮度以外の3つのポイント
ここからは、脂が乗った一尾の魚の選び方を解説します。
チェックポイントは3つです。
鮮度で迷った場合は、より脂が乗った魚を選びましょう。
顔が小さい
脂が乗った魚は、頭の後ろがこんもりと盛り上がっているため、顔が小さく見えます。
頭のすぐ後ろにあるコラーゲン質に、脂が入り込むからです。
小顔な魚はエサをたくさん食べて、良質な脂をたっぷり蓄えています。
頭と胴体を線で区切って見ると、顔の大きさがわかりやすいです。
顔の大きさがわかりにくい場合は、目の大きさで判断します。
小顔な魚は目も小さくなるからです。
いい香りがする
魚の香りは身ではなく、脂から香ります。
魚の脂に含まれる「不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)」が、香り成分と結合するからです。
よい香りがする魚や香りが強い魚は、脂が乗っている証拠です。
逆に酸っぱい臭いがする場合は、脂が酸化して古くなっています。
幅が太く厚みがある
魚を横に寝かせたときの幅や身の厚みで、脂の乗り具合をチェックします。
魚の幅とは、背中からお腹までの縦の長さです。
長いほど幅が太く、丸みを帯びているほど脂が乗っています。
魚の厚みとは地面からの高さで、高いほど肉厚です。
重要なのは、全体に丸みを帯びていることです。
お腹だけ膨らんでいる魚は、内臓脂肪が付いているだけで脂を蓄えていることには
なりません。
【鮮魚店で購入するときのコツ】
新鮮な一尾の魚を買ったら、その場でエラと内蔵を取ってもらいましょう。
少しでも鮮度を保つためです。
一尾の魚を取り扱うお店の場合、鮮魚コーナーの店員さんに頼めば無料で処理してくれます。
切り身の魚の選び方【スーパーで見るべき4つのポイント】
切り身の魚はたいていパック詰めされているため、見た目で判断するしかありません。
選び方のポイントは以下の4つ。
皮付きの場合は、皮目の模様もチェックしましょう。
模様がくっきりしていて、張りがある魚が新鮮です。
水分が出ていない
時間経過とともに切り身から、ドリップという赤い液体が染み出してきます。
ドリップの量が多いほど、時間がたって鮮度が落ちている証拠です。
もっともわかりやすい選び方なので、真っ先にチェックしましょう。
ドリップには水分の他に、タンパク質やうま味成分などの栄養素も含まれます。
鮮度が落ちているだけでなく、旨みが抜けた状態です。
ドリップが出ている切り身は細菌が繁殖しやすい環境が整っているため、品質が低下します。
たいてい吸水シートが敷かれていますが、シートに赤い汁がにじんでいるのでよく見ればわかります。
血合いがピンク色
新鮮な魚は、血合いがピンク色です。
鮮度が落ちるほど茶色や黒に変色し、臭いもきつくなります。
鮭の血合いは少し違います。
新鮮なうちは薄い茶色で、鮮度が落ちると黄ばんで黄土色になります。
鮭の切り身の選び方は、こちらで詳しく解説しています。
美味しい鮭の切り身の選び方【料理人が教える5つのポイント】
血合いは切り身だからこそ、見られるポイントです。
鮮度の差が明確にでやすいので、欠かさずチェックしましょう。
身に色つやがあるかも、見るべきチェックポイントです。
切ってから時間がたった切り身は、身の色がくすんで見えます。
切り口のカドが立っている
切りたての切り身には、下記の特徴があります。
- 切り口の端が鋭くなっている(エッジが効いている)。
- 切り口がなめらかで、皮より身が張り出している。
- 身に弾力があり、ひび割れていない。
鮮度が落ちると下記のようになります。
- 身の弾力が失われ切り口がダラっとしてくる。
- 繊維が広がり身と身の間に隙間ができる(身割れ)。
- 皮にシワが寄ってきて張りがなくなる。
切り身の場合は、ラベルの表示を参考にする選び方もできます。
冷凍物を解凍した切り身には「解凍」、養殖の魚の場合は「養殖」と表示することが義務づけられています。
切り身の形で選ぶ(部位)
どんな魚でも、背中よりお腹に脂が乗っています。
とくに「大トロ」と呼ばれる内臓周りの身は、もっとも脂が多い部位です。
【腹側の切り身の選び方】
- 皮が白銀色:腹側の特徴
- 切り身が弓型:頭に近く脂が多い
【背側の切り身の選び方】
- 皮が黒銀色:背側の特徴
- 半月型→魚の中央部分で身が厚い
弓型の先端部分が大トロです。
背側の切り身は腹側ほどの脂はないものの、肉厚で食べ応えがあります。
皮の色で腹と背を見極め、切り身の形で頭側か尻尾側かを判断しましょう。
鮮度を保つ魚の保存方法【水気の処理と空気に触れさせないことが重要】
買った魚はできるだけ早く食べ切るか、家に持ち帰ってすぐ保存するのが鉄則です。
魚は鮮度が落ちやすく、時間がたつほど食中毒の危険が高まります。
当日に食べない分は、調理前に保存するようにしましょう。
魚の保存に必要な道具は、下記のとおり。
- ラップ
- キッチンペーパー
- ジッパー付き保存袋
- アルミバット(金属製トレー)
アルミバットは熱伝導率が高く、急速冷凍におすすめです。
一尾の魚の保存方法
エラと内蔵を取り、血をキレイに洗い流してから保存しましょう。
頭も落としたほうが、すっきりと収納できます。
袋にまとめて保存しておけば、アラ炊きなどの料理に使えます。
【冷蔵保存】
- キッチンペーパーで水気をよく拭き取る
- お腹に乾いたキッチンペーパーを詰める
- 魚体にもキッチンペーパーを巻き付ける
- 一尾ずつラップでピッタリ包む
- ジッパー付き保存袋かビニール袋に入れる
- しっかりと空気を抜いて密封する
【冷凍保存】
- キッチンペーパーで水気をよく拭き取る
- 一尾ずつラップでピッタリ包む
- 保存袋に入れて空気を抜いて密封する
- 金属製のトレーに乗せて急速冷凍する
【保存期限】
- 冷蔵…2~3日(一度キッチンペーパーを交換する)
- 冷凍…1ヵ月ほど
切り身の魚の保存方法
醤油や味噌に漬け込んでから保存すると、臭い移りを防げて調理時間も短縮できます。
漬け時間はお好みで調整してください。
長いほど水分が抜けて味が濃くなるので、頃合いを見て冷凍庫へ移しましょう。
【冷蔵保存】
- キッチンペーパーで水気をよく拭き取る
- 一切れずつキッチンペーパーで包む
- ドリップが多い場合は冷蔵庫で2~3時間乾燥させる
- 一切れずつラップで包む
- 保存袋かビニール袋に入れる
- しっかり空気を抜いて密封する
【冷凍保存】
- 水気をよく拭き取る
- 一切れずつラップに包む
- 保存袋に入れて空気を抜いて密封する
- 金属製のトレーに乗せて急速冷凍する
【保存期限】
- 冷蔵…記載の賞味期限どおり
- 冷凍…1ヵ月ほど
- 漬け…冷蔵2~3日、冷凍1ヵ月ほど
魚の保存方法のコツ
保冷剤や氷で魚を包むと、温度が下がってより鮮度をキープできます。
低温にするほど、細菌の繫殖を抑えられるからです。
飲食店の魚用冷蔵庫は、1~4℃と家庭用よりも低めに設定されています。
魚を包んでいるキッチンペーパーは、毎日交換すると衛生的です。
とくにお腹は血合いから血液混じりの水分が出るので、まめに交換しましょう。
- 低温に保つ
- よく水気を取る
- しっかり密封する
魚の解凍方法
もっとも味が落ちないのは、冷蔵庫で自然解凍です。
低温でゆっくり解凍するので、ドリップが出ません。
解凍時間は6~8時間です。
急ぐ場合は、流水解凍がおすすめです。
やや解凍ムラができますが、ドリップが出にくいやり方です。
ボウルに冷凍した魚を保存袋ごと入れて、水道水を流して解凍します。
魚に水が直接触れないよう、注意しましょう。
氷水に浸けて解かす方法もあります。
流水解凍よりも時間はかかりますが、ドリップが出にくく味も落ちません。
新鮮な魚が必ずしも美味しいとは限らない【鮮度と旨みの関係性】
魚は死後硬直が始まってから解けるまでの間に旨みが増え続け、その後は腐敗していきます。
旨みのピークは魚の種類や魚体の大きさによって異なり、死後硬直を遅らせることである程度コントロール可能です。
魚のうま味成分「イノシン酸」は、魚の生存中は体内に存在しません。
エネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)というタンパク質が、分解されてイノシン酸に変化します。
獲れたてといわれる死後硬直前の状態ではATPの分解は始まっておらず、イノシン酸の量が不十分なため旨みを感じにくいのです。
熟成魚といわれる魚は、死後硬直が進みATPが分解された状態をいいます。
うま味成分をたっぷり含んでいるため、魚本来の旨みを強く感じます。
【魚の熟成メカニズム】
「絶命→死後硬直開始・うま味成分増加→身の軟化・うま味成分減少→腐敗」 |
新鮮な魚と熟成魚の違い
獲れたてと熟成のどちらがいいかは食べる人の好みによるため、断定はできません。
魚の種類によって、熟成への向き不向きもあります。
たとえば、鮮度が落ちやすい青魚や歯ごたえを楽しみたい貝類は、新鮮なうちに食べたいところです。
一方でマグロ・ヒラメ・タイなどは、熟成させることで旨みが激増します。
注意点は魚の選び方を間違えると、熟成しても美味しくならないということ。
熟成するしないにかかわらず、脂の乗った新鮮な魚を選べることが大切です。
魚を熟成させるには適切な知識と保存技術も必要なため、知識として「新鮮な魚が必ずしも美味しいとは限らない」と覚えておきましょう。
参考までに、獲れたての魚と熟成魚の違いは下記のとおりです。
【新鮮な魚】
- 身がコリコリとして歯ごたえがある
- 旨みが少なく魚の味が薄い
- 魚独特の臭いが少ない
【熟成魚】
- 身がもっちりとして歯ごたえはない
- 旨みが多く魚の味が濃い
- 魚の香りが強い
魚の選び方【まとめ】
魚の選び方はひとつではありません。
何を重視して選ぶかで、見るべきポイントが変わります。
新鮮な一尾の魚の選び方は、下記のとおりです。
一尾の魚はパック詰めされていないことも多いので、触って鮮度をチェックできます。
新鮮な切り身の選び方は、下記のとおりです。
脂が乗った魚の選び方は、下記のとおりです。
弓型で皮が白や銀色の切り身が、脂の多い腹側です。
鮮度が落ちない魚の保存方法で重要なのは、水気を処理して密封することです。
水気は腐敗を早め、空気に触れると酸化により劣化します。
魚は自然の恵みであり、いつも最高の物が手に入るとは限りません。
店頭に並ぶ魚の量は、天候や海の状態に大きく影響されるからです。
よい魚を手に入れるには運も必要ですが、よい魚を見抜く選び方が何より大切です。
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