鮭の切り身はおかずの定番ですが、選び方を知っている人は多くありません。
どこを見て選べばいいのか、わかりにくいからです。
私は料理人として16年間、いろいろな鮭やサーモンの切り身を見てきました。
鮭丸ごと1匹をおろしていた時代もあります。
この記事では「鮭の切り身の選び方」について、詳しく解説します。
最後まで読むと、作る料理によって鮭の切り身を自在に選べます。
選び方のポイントは下記の5つです。
切り身自体の品質だけでなく、鮭の種類や旬の時期による選び方もあります。
鮭(サーモン)以外の選び方を刺身の選び方を知りたい方はコチラ。
刺身以外の魚の選び方を知りたい方はコチラ。
魚以外の選び方を知りたい方はイカの選び方やカニの選び方をどうぞ。
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美味しい鮭の切り身の選び方【脂の乗りと鮮度がわかるポイント3選】
切り身の選び方で重要なのは、ドリップが出ていないかを真っ先に確かめることです。
鮮度が落ちている証拠で、旨みも抜けているからです。
ドリップには栄養も含まれるため、切り身の表面に細菌が繁殖している恐れがあります。
色の付いた水分が出ている切り身はさけるのが選び方の基本です。
脂の乗りと鮮度がわかる切り身の選び方は、次の3つです。
鮭の切り身を見るときは、蛍光灯から離すのがコツです。
反射や光の加減で、切り身の色が正しく判断できないからです。
サシの入り方
脂が乗った鮭の切り身の選び方は、サシが多く表面がキラキラ光っているものを選ぶこと。
身に入っている白い線がサシで、白くてはっきりしているほど脂が乗っています。
マグロと違い鮭は筋が少ないので、サシと筋を見間違えることはないでしょう。
切り身によっては細長い部分の先に、ハラスが付いています。
鮭の大トロにあたる部位で、もっとも脂が乗っています。
ハラスだけをまとめて販売することもあるため、すべての切り身に付いているとは限りません。
ハラス付きの切り身は、細長い部分の先端を見ればわかります。
皮と身の間に、太いサシが帯状に入っていたらハラス付きです。
血合いの色と厚み
新鮮な切り身の選び方は、血合いがキレイで厚みがあるものを選ぶこと。
血合いは切り身の真ん中あたり、背中とお腹の境目にあります。
皮と身の間にある三角型の部分で、鮭の場合は薄い茶色です。
新鮮な切り身ほどキレイな茶色で、鮮度が落ちてくると黒ずんで生臭くなります。
また、脂が乗っている切り身は、血合いに厚みがあります。
切り身の形(部位)
鮭の切り身には2つの形があり、味わいが異なります。
半身を縦にカットしているため、切る場所によって形が変わるからです。
作る料理によって、部位の選び方を変えるとよいでしょう。
- 弓形の切り身…頭(カマ)に近い部位
- 半月形の切り身…尻尾に近い部位
- 細長い切り身…大トロにあたる部位
頭(カマ)に近いほど脂が乗り、尻尾に近づくほど身に弾力があります。
- 皮が白銀色…腹側の部位
- 皮が黒銀色…背側の部位
腹側の身はジューシーで、背側の身はあっさりしています。
弓形の切り身
頭(カマ)に近い内蔵まわりの身は、脂が乗っています。
運動量が少ないため、脂肪が付きやすいからです。
弓形の細長い部分が、脂が多い腹側の身です。
とくに先端はハラスといって、鮭の大トロにあたります。
弓形の切り身の特徴は次のとおり。
- 脂が乗っている
- 身がやわらかい
- 骨が取りにくい
細長い部分に太い腹骨と、膨らんだ部分(背側の身)に隠れた骨があります。
膨らんだ部分のほぼ真ん中に、背骨と平行して並んでいます。
弓形の切り身の選び方は、細い部分がより長いものを選ぶこと。
脂が多い腹側の身が、たくさん付いているからです。
頭(カマ)に近い切り身ほど、象の鼻のように細長く伸びています。
半月形の切り身
運動量が多い部位なので、身に弾力があります。
ほどよい脂の乗りで、あっさりした味わいが特徴です。
冷めても脂でギトギトにならないので、鮭フレークに向いています。
おにぎりやチャーハンの具材にピッタリです。
手作業でカットしている店が多く、1切れがやや大きい場合があります。
半月形の切り身の特徴は次のとおり。
- 身に弾力がある
- 骨が取りやすい
- 脂が少ない
半月形の切り身の選び方は、身が厚く丸みを帯びたものを選ぶこと。
身が薄くなるほど尻尾に近く、筋っぽい切り身になるからです。
逆に丸みがあるほど鮭の中心に近く、肉厚な部位になります。
細長い切り身
ハラスという部位で、鮭の大トロにあたります。
脂が多いので、シンプルに塩焼きがおすすめです。
皮をよく焼きにすると丸ごと食べられ、皮ぎしの脂を味わえます。
安価でまとめて売られていることが多く、普通の切り身よりも安く買えます。
ハラスの特徴は次のとおり。
- 一番脂が多い
- 骨がない
- 安い
鮭の中でもっとも脂が多く、骨がありません。
お年寄りから子供まで、安心して食べられる部位です。
ハラスの選び方は、ドリップが出ていないものを選ぶこと。
大トロ級の部位なので、品質に大きな差は出ません。
どれを選んでもジューシーで美味しいです。
鮭の種類や旬で切り身を選ぶ【白鮭(秋鮭)・紅鮭・銀鮭・サーモンの違い】
鮭は種類によって旬の時期が違うので、旬で切り身を選ぶことも可能です。
身質や脂の乗りにも違いがあり、それぞれの特徴を活かすことでより美味しい鮭料理が作れます。
鮭の種類や旬を知っておくと、選択肢がしぼられ選びやすくなります。
切り身にされる鮭の種類は、おもに下記の3つです。
旬の切り身の簡単な選び方は、生鮭を選ぶこと。
鮭の種類に関係なく、旬の時期に多く出まわるからです。
白鮭(秋鮭)の切り身
身は淡いオレンジ色で、ほかの鮭より身色が薄いことから白鮭と呼ばれます。
日本で鮭といえば白鮭のことで、スーパーでは鮭や秋鮭と表記されることが多いです。
獲れる時期によって「秋鮭・時鮭・鮭児」と呼び方が変わります。
産卵のために戻ってくるのが秋鮭で、エサを求めて回遊してくるのが時鮭と鮭児です。
秋鮭(秋味)
あっさりしているので、ムニエルやフライなど油を使った料理に向いています。
卵や白子に体脂肪が使われているため、脂の乗りは控えめです。
川をさかのぼる前の白鮭がもっとも美味しいとされ、卵(すじこ)や白子も秋が旬です。
9~11月頃に獲れる白鮭で、流通するほとんどが国内で獲れた天然物です。
おもに、北海道沿岸や東北地方で漁獲されます。
時鮭(ときざけ・ときしらず)
全身に脂肪を蓄えているので、脂の乗りがよく栄養価も高いです。
産卵準備さえしていない段階のため、卵や白子に脂肪を取られていません。
とくに内蔵まわりのハラス部分は「秋鮭の3倍以上は脂が乗っている」といわれます。
5~7月に獲れる白鮭で、秋に獲れるものより希少です。
ロシア北部のアムール川で生まれた白鮭が、北海道沿岸を回遊しているときに水揚げされます。
時期外れに獲れることから「時知らず」と呼ばれます。
鮭児(けいじ)
成長するためだけに脂肪を蓄えているので、全身がマグロの大トロのような味わいです。
11月の上旬~中旬に北海道のオホーツク海側で獲れる、生後2~3年の幼い白鮭です。
1万尾に1~2尾しか獲れない超希少種のため、幻の鮭といわれています。
残念ながら滅多に獲れないため、スーパーなどに並ぶことはありません。
ネット通販で冷凍の鮭児を見かけますが、1キロ12万~40万円ほどです。
紅鮭の切り身
身が締まっていて、鮭の旨みが強いのが特徴です。
ほどよく脂も乗っているので、焼き物や汁物など幅広い調理法ができます。
産卵期に入ると身の色が真っ赤になるため、紅鮭と呼ばれます。
秋鮭や銀鮭よりも高級で、色が赤いほど美味しい紅鮭です。
北欧やアメリカでは、スモークサーモンでよく食べられています。
北太平洋などの北方にしか生息できないため、日本では漁獲できません。
北海道で水揚げされる紅鮭は国産ではなく、正確にはロシア海域で獲られたものです。
国内に流通する紅鮭は天然物のみで、6~8月頃に旬を迎えます。
ロシアやカナダから輸入された、冷凍品が主流です。
銀鮭の切り身
名前のとおり皮はキレイな銀色で、身は濃いオレンジ色をしています。
紅鮭や秋鮭よりも、脂が多く身がふっくらしてやわらかいのが特徴です。
人によっては、養殖特有の臭みを感じます。
ほかの鮭に比べて成長が早いため、養殖に向いています。
日本で流通する銀鮭は、ほとんどが養殖物です。
大半がチリからの輸入で、国内では宮城県や鳥取県などが主流です。
養殖しやすいため流通量も多く、コンビニのお弁当やおにぎりにも使われています。
輸入の銀鮭は年間とおして流通しますが、国産の生銀鮭が出まわるのは4~7月だけです。
鮭とサーモンの違い
鮭は生食できませんが、サーモンは生食できます。
サーモンは生食用に養殖されているからです。
鮭の餌であるオキアミは、アニサキスという寄生虫を食べることがあります。
アニサキスを食べたオキアミを鮭が食べることで、鮭にもアニサキスが寄生します。
サーモンは養殖のため、そもそも餌に寄生虫が混入する心配がありません。
日本国内で流通しているサーモンは、おもに3種類です。
- サーモントラウト
- アトランティックサーモン
- キングサーモン
鮭もサーモンも選び方は同じです。
サシの入り具合、血合いの色で脂と鮮度を見極めて、切り身の形で部位を特定してください。
サーモントラウト
味や身色に優れていたニジマスを、海で養殖できるよう品種改良したものです。
身は鮮やかなオレンジ色で、適度な脂の乗りとプリっと弾力ある食感が特徴です。
手頃な値段で安定して供給されるため、スーパーや飲食店などで重宝されます。
最大の生産地はチリで、国内では津軽の「海峡サーモン」や長野の「信州サーモン」などのご当地サーモンが人気です。
アトランティックサーモン
世界でもっとも食べられていて、一般にサーモンといえばアトランティックサーモンのことを指します。
身は淡いオレンジ色で、上質な脂がとろけるような食感を生み出します。
「とろサーモン」の代表格であり、養殖の中ではもっとも高価です。
おもに生食用に輸入され、ほとんどがノルウェー産です。
中でも水や餌の安全性など厳しい基準をクリアしたものは「ノルウェーサーモン」と呼ばれ、ブランド化しています。
キングサーモン
海外では、よくステーキで食べられています。
身のオレンジ色は、個体差によって濃かったり淡かったりします。
肉厚でやわらかく、脂の乗りがよいのが特徴です。
養殖・天然を含めたサケ科の中で、もっとも高価です。
カナダから輸入される養殖物がメインで、国内で獲れる天然物は「マスノスケ」と呼ばれかなり希少です。
生鮭と塩鮭の違い
塩水に浸けているか浸けていないかです。
生鮭は塩水処理をしていない新鮮な切り身で、旬の時期に多く出まわります。
生鮭や生サーモンは、水揚げから1回も冷凍していない鮭のことを指します。
解凍する必要がないため、ドリップが出ず旨みが抜けていません。
旬の切り身の簡単な選び方は、生鮭と表記されている切り身を選ぶこと。
塩鮭は保存性を高めるために、塩水に浸けた鮭の切り身です。
塩水の塩分濃度によって「甘口(甘塩)、中辛、辛口」にわかれ、それぞれの塩分濃度はルール付けされています。
- 甘口(甘塩)…3%未満
- 中辛…3~6%未満
- 辛口…6~10%未満
ただし、3%でも5.9%でも「中辛」と表記されるため、お店によって塩加減が異なります。
鮭の切り身の保存方法【水分を抜いて臭みを抑え美味しさ長持ち】
鮭の切り身の保存方法は3つあり、下処理はすべて同じです。
重要なのは余分な水分を抜くこと。
水分が腐敗や臭みの原因になるからです。
塩の浸透圧で、鮭の切り身がもつ臭みを含んだ水分が抜けます。
冷凍する場合は、冷凍焼けのリスクを抑えられます。
塩鮭はすでに塩水処理がなされているので、水分を抜く必要はありません。
切り身に残っている水分を、しっかり拭き取ってください。
鮭の切り身の保存に必要なものは5つです。
- 塩
- ラップ
- キッチンペーパー
- ジッパー付き保存袋(フリーザーバック)
- あれば金属製のバット
鮭の切り身の冷蔵保存
冷蔵の保存期限は2~3日ほど。
塩鮭の場合は3~4日ほど。
毎日のように鮭を食べるご家庭なら、冷蔵保存がおすすめです。
解凍の手間がかからず、すぐに調理にとりかかれます。
【手順】
- 塩を振って5~10分放置する。
- 水分をキッチンペーパーでよく拭き取る。
- ひと切れずつラップでピッタリ包む。
- 保存袋に並べてしっかり空気を抜く。
- チルド室(約0℃)で保存する。
【ポイント】
塩の量は塩焼きよりやや多めです。
表面に水分が出てきたら、キッチンペーパーで押さえ付けるようにしっかり拭き取ります。
ラップと保存袋でしっかりと密封して、空気に触れるのを防ぎます。
魚の保存に適した冷蔵温度は、-1~2℃です。
鮭の切り身の冷凍保存
冷凍の保存期限は2~3週間ほど。
頻繁に鮭を食べないご家庭や、特売などで大量に切り身を購入した場合におすすめです。
【手順】
- 塩を振って5~10分放置する。
- 出てきた水分をよく拭き取る。
- ひと切れずつラップで包む。
- フリーザーバックに並べて空気を抜く。
- 金属製バットに乗せ冷凍庫に入れる。
【ポイント】
冷凍焼けを防ぐためにも、しっかり水分を処理しましょう。
冷凍用の保存袋(フリーザーバック)を使って、しっかり空気を抜きます。
金属製のバットは熱伝導率がよく、食材を急速に冷凍するのに向いています。
鮭の切り身の下味冷凍
下味冷凍の保存期限は3~4週間ほど。
忙しいご家庭の主婦におすすめです。
保存と同時に味付けするので、塩焼き以外のメニューでも加熱するだけで簡単に作れます。
【手順】
- 塩を振って5~10分放置して、水気を拭き取る。
- 待っている間に、好みの味付けの調味液を作る。
- フリーザーバックに調味液と切り身を入れる。
- しっかり空気を抜いて、ジッパーをピッタリ閉じる。
- 平らにして金属製のバットに乗せ、冷凍庫に入れる。
【ポイント】
調味液に臭みを移さないためにも、水分をしっかり処理することが重要です。
調味液の量の目安は、鮭の切り身2切に対して大さじ3(約60g)です。
保存袋の口をしっかり閉じて、中身がこぼれないようにしましょう。
醤油漬け、西京漬け、塩オリーブオイル漬けなど、お好きな味付けを試してください。
鮭の切り身の美味しい食べ方【部位ごとにおすすめの調理法を紹介】
調理前に鮭の切り身に下処理をするのが、美味しく作るコツです。
臭みを抜いたり、身崩れを防いだりする効果があります。
調理前の下処理
生鮭はうすく塩を振って15~20分置き、出てきた水分をキッチンペーパーでよく拭き取ります。
- 臭みが取れる
- 下味がつく
- 身が締まる
塩の脱水効果で鮭の身が締まり、調理中に切り身が崩れるのを防ぎます。
塩鮭はそのまま調理できますが、塩分が気になる場合は塩抜きがおすすめです。
酒2:みりん1を混ぜたものに切り身を漬け込むと、適度に塩味が抜けます。
アルコールの効果で鮭の臭みが消え、みりんの甘みと旨みが加わります。
焼き魚はもちろん、塩味を押さえれば他の料理にも使用可能です。
酒とみりんの量は切り身が被るくらいで、漬け込み時間は冷蔵庫で3~4時間です。
数切まとめて漬け込むと、酒とみりんが少量で済みます。
切り身の部位ごとにおすすめの調理法を紹介
弓形の切り身は、焼き物や煮物がおすすめ。
脂が乗ったお腹の身は、塩焼きにするとトロける食感を味わえます。
ジューシーな部位なので、煮付けにしてもパサつきません。
半月形の切り身は、ムニエルやフライがおすすめ。
肉厚であっさりした身は油やバターとの相性がよく、加熱するとふっくら仕上がります。
切り身の形が整っているので、小麦粉やパン粉をまぶしやすい点もおすすめポイントです。
脂が多いハラスは塩焼きがおすすめ。
シンプルに塩焼きで、皮目をパリパリに焼くと美味しいです。
皮と身の間にある「魚で一番美味しい脂」が存分に味わえます。
骨がないので、大きくカットしてお茶漬けの具にするのもおすすめです。
鮭の切り身の選び方【まとめ】
美味しい鮭の切り身の選び方は、次の5つです。
切り身がどれも同じ状態のときは、鮭の種類や旬で選びましょう。
部位によって調理方法を変えると、鮭料理のバリエーションも増やせます。
鮭の部位は、切り身の形でわかります。
切り身を保存するさいは、下処理が重要です。
塩を振って放置し、水分を抜いて臭みや冷凍焼けを防ぎます。
下味を付けて冷凍すれば、塩焼き以外のメニューも加熱するだけです。
鮭の切り身は、食卓に並ぶ機会も多い食材です。
この機会に選び方をマスターしましょう。
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